エディットを右クリックすると、メニューが表示されます。今回は、このメニューを表示できないようにします。
右クリックされた場合、サブクラス化という方法を用いて、処理を横取りします。
エディット - インコのWindowsSDK で作成したソースを修正します。
流れ
サブクラス化をします。
サブクラス化とは:
「メッセージの横取り」と考えると分かりやすいです。
ここでは右クリックされたときのメニューを表示させないため、右クリック(WM_RBUTTONDOWN,WM_RBUTTONUP)されたときに、「メッセージの横取り」をします。メッセージの横取りをするかどうかの判断は、新しく用意したウィンドウプロシージャで行います。
ウィンドウプロシージャについては、ウィンドウプロシージャ - インコのWindowsSDKをご覧ください。
サブクラス化の方法:
1.GetWindowLong()で、ウィンドウの情報を取得。第2引数をGWL_WNDPROCにすることで、ウィンドウプロシージャのアドレス を取得します。
LONG GetWindowLong( HWND hWnd, // ウィンドウハンドル int nIndex // 取得するデータの指定 );
引数 nIndex の定数 | 取得される属性 |
---|---|
GWL_WNDPROC | ウィンドウプロシージャのアドレス |
GWL_HINSTANCE | アプリケーションのインスタンスハンドル |
GWL_HWNDPARENT | 親ウィンドウのハンドル |
GWL_STYLE | 拡張ウィンドウスタイル |
GWL_USERDATA |
ウィンドウに関連付けられたアプリケーション定義の32ビット値 各ウィンドウは、それに対応する32ビット値を持っています。この値は、ウィンドウを作成したアプリケーションが自由に使用できるもので、0で初期化されています。 |
GWL_ID | ウィンドウのID |
DWL_MSGRESULT |
ダイアログボックスプロシージャで処理されたメッセージの戻り値 ※hWndがダイアログボックスのハンドルの場合 |
DWL_DLGPROC |
ダイアログボックスプロシージャのアドレス ※hWndがダイアログボックスのハンドルの場合 |
DWL_USER |
アプリケーション定義の情報 ※hWndがダイアログボックスのハンドルの場合 |
2.SetWindowLong()で、ウィンドウの属性を変更します。
第2引数をGWL_WNDPROCにすることで、ウィンドウプロシージャを新しく用意したウィンドウプロシージャ(ここでは、ToolbarProc)にします。
また、第2引数をGWL_USERDATAにすることで、元のウィンドウプロシージャに戻します。
LONG SetWindowLong( HWND hWnd, // ウィンドウハンドル int nIndex, // 変更するデータの指定 LONG dwNewLong // 新しい値 );
引数 nIndex の定数 | 取得される属性 |
---|---|
GWL_WNDPROC | ウィンドウプロシージャのアドレス |
GWL_HINSTANCE | アプリケーションのインスタンスハンドル |
GWL_HWNDPARENT | 親ウィンドウのハンドル |
GWL_STYLE | 拡張ウィンドウスタイル |
GWL_USERDATA |
ウィンドウに関連付けられたアプリケーション定義の32ビット値 各ウィンドウは、それに対応する32ビット値を持っています。この値は、ウィンドウを作成したアプリケーションが自由に使用できるもので、0で初期化されています。 |
GWL_ID | ウィンドウのID |
DWL_MSGRESULT |
ダイアログボックスプロシージャで処理されたメッセージの戻り値 ※hWndがダイアログボックスのハンドルの場合 |
DWL_DLGPROC |
ダイアログボックスプロシージャのアドレス ※hWndがダイアログボックスのハンドルの場合 |
DWL_USER |
アプリケーション定義の情報 ※hWndがダイアログボックスのハンドルの場合 |
3.新しく用意したウィンドウプロシージャ(ここではToolbarProc)で、右クリック(WM_RBUTTONDOWN,WM_RBUTTONUP)されたときに、ReleaseCapture()で、マウスのキャプチャーを解放します。
BOOL ReleaseCapture(VOID);
4.右クリック(WM_RBUTTONDOWN,WM_RBUTTONUP)されたときの、新しく用意したウィンドウプロシージャ(ここではEditProc)の戻り値は0にします。
それ以外の場合は、CallWindowProc()により、元のウィンドウプロシージャにより処理させます。
LRESULT CallWindowProc( WNDPROC lpPrevWndFunc, // コールバック関数のアドレス HWND hWnd, // メッセージを受け取るウィンドウのハンドル UINT Msg, // メッセージコードを指定 WPARAM wParam, // メッセージの付加情報 LPARAM lParam // メッセージの付加情報 );
ソースコードの入力
ソースコードは下記のように入れてください。
#include <windows.h> #include "resource.h" // グローバル変数: HINSTANCE hInst; // 現在のインターフェイス WNDPROC defProc; // このコード モジュールに含まれる関数の宣言を転送します: ATOM MyRegisterClass(HINSTANCE hInstance); BOOL InitInstance(HINSTANCE, int); LRESULT CALLBACK WndProc(HWND, UINT, WPARAM, LPARAM); LRESULT CALLBACK EditProc(HWND hWnd, UINT msg, WPARAM wParam, LPARAM lParam); int APIENTRY WinMain(HINSTANCE hInstance, HINSTANCE hPrevInstance, LPSTR lpCmdLine, int nCmdShow) { MSG msg; MyRegisterClass(hInstance); // アプリケーションの初期化を実行します: if (!InitInstance (hInstance, nCmdShow)) { return FALSE; } // メイン メッセージ ループ: while (GetMessage(&msg, NULL, 0, 0)) { TranslateMessage(&msg); DispatchMessage(&msg); } return (int) msg.wParam; } // // 関数: MyRegisterClass() // // 目的: ウィンドウ クラスを登録します。 // ATOM MyRegisterClass(HINSTANCE hInstance) { WNDCLASSEX wcex; wcex.cbSize = sizeof(WNDCLASSEX); wcex.style = CS_HREDRAW | CS_VREDRAW; wcex.lpfnWndProc = WndProc; wcex.cbClsExtra = 0; wcex.cbWndExtra = 0; wcex.hInstance = hInstance; wcex.hIcon = LoadIcon(NULL , IDI_APPLICATION); wcex.hCursor = LoadCursor(NULL, IDC_ARROW); wcex.hbrBackground = (HBRUSH)(COLOR_WINDOW+1); wcex.lpszMenuName = MAKEINTRESOURCE(IDC_HP); wcex.lpszClassName = TEXT("HP"); wcex.hIconSm = LoadIcon(NULL , IDI_APPLICATION); return RegisterClassEx(&wcex); } // // 関数: InitInstance(HINSTANCE, int) // // 目的: メイン ウィンドウを作成します。 // BOOL InitInstance(HINSTANCE hInstance, int nCmdShow) { HWND hWnd; hWnd = CreateWindow(TEXT("HP"), TEXT("HP"), WS_OVERLAPPEDWINDOW, CW_USEDEFAULT, 0, CW_USEDEFAULT, 0, NULL, NULL, hInstance, NULL); if (!hWnd) { return FALSE; } ShowWindow(hWnd, nCmdShow); UpdateWindow(hWnd); return TRUE; } // // 関数: WndProc(HWND, UINT, WPARAM, LPARAM) // // 目的: メイン ウィンドウのメッセージを処理します。 // // WM_CREATE - ウインドウ作成時の処理 // WM_SIZE - ウインドウサイズ変更時の処理 // WM_COMMAND - アプリケーション メニューの処理 // WM_DESTROY - 中止メッセージを表示して戻る // // LRESULT CALLBACK WndProc(HWND hWnd, UINT message, WPARAM wParam, LPARAM lParam) { int wmId, wmEvent; HWND static hEdit; switch (message) { case WM_CREATE: hEdit = CreateWindowEx(WS_EX_CLIENTEDGE, // 拡張ウィンドウスタイル TEXT("EDIT"), TEXT("ここに入力"), WS_CHILD | WS_VISIBLE | ES_MULTILINE, 0, 0, 0, 0, hWnd, (HMENU)IDC_EDIT1, hInst, NULL); /* サブクラス化 */ defProc = (WNDPROC)GetWindowLong(hEdit, GWL_WNDPROC); SetWindowLong(hEdit, GWL_WNDPROC, (LONG)EditProc); SetWindowLong(hEdit, GWL_USERDATA, (LONG)defProc); break; case WM_SIZE: MoveWindow(hEdit, 0, 0, LOWORD(lParam), HIWORD(lParam), TRUE); break; case WM_COMMAND: wmId = LOWORD(wParam); wmEvent = HIWORD(wParam); // 選択されたメニューの解析: switch (wmId) { case IDM_EXIT: DestroyWindow(hWnd); break; default: return DefWindowProc(hWnd, message, wParam, lParam); } break; case WM_DESTROY: PostQuitMessage(0); break; default: return DefWindowProc(hWnd, message, wParam, lParam); } return 0; } /* サブクラス */ LRESULT CALLBACK EditProc(HWND hWnd, UINT msg, WPARAM wParam, LPARAM lParam) { switch (msg) { case WM_RBUTTONDOWN: case WM_RBUTTONUP: ReleaseCapture(); return 0; } return CallWindowProc(defProc, hWnd, msg, wParam, lParam); }
上記の太線で示している箇所のみ追加です。
#define IDM_ABOUT 104 #define IDM_EXIT 105 #define IDC_HP 109 #define IDC_EDIT1 1001
#include "resource.h" ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////// // // メニュー // IDC_HP MENU BEGIN POPUP "ファイル(&F)" BEGIN MENUITEM "アプリケーションの終了(&X)", IDM_EXIT END POPUP "ヘルプ(&H)" BEGIN MENUITEM "バージョン情報(&A)...", IDM_ABOUT END END